【前回までのあらすじ】
○○病院1階にある、めまい専門の内科で『耳管開放症』という、聞きなれない診断をされたコルクさんは、その診断を持って、2階の耳鼻咽喉科へ行くように言われたのだった…。
診察が終わった…と思い込んでいたコルクさんは、トボトボよろよろ教えられた道をたどり、2階の耳鼻咽喉科にたどり着く。
待ち時間はそれほど無く、すぐに呼ばれたコルクさんは、聴力検査を受けた後、診察室へ通される。
先ほど内科からもらった、紙や検査結果を見ながら「ん~、やはり低い音が、聞こえにくいようですねぇ、漢方飲んで様子見ましょう」という年配の先生。
大量の頭からの汗を、ハンドタオルで拭うコルクさんは、診察室を後にする(この時コルクさんにとって、汗を拭うためのハンドタオルは必需品になっていた、ハンカチではとても対処しきれない汗の量なのだ)。
待つこと3分程、看護師さんから耳管開放症のちょっとした資料をもらい、『爪もみ』が効果的とのことで、素直に指導を受けるコルクさん。
1階の会計窓口へ降りたのは11:40頃だった。
今朝来た時、ロビーや長椅子を独占していた、人生の先輩方も今はもういない、天童よしみの歌も終わったのだろう…。
漢方を飲み始めて2、3日たった頃、コルクさんの耳は周りの音がやたらと響いて聞こえていた。
そんな時電話が鳴った、実家からであった。
内容は、明日は祖母の三回忌、お坊さんにお経をあげてもらうので、仕事の都合がつけば来いというものである。
そこで、体調を崩し仕事を休んでいる事、車に乗れない状態である事を、簡単に説明する。
住家に引きこもっていても退屈なコルクさんは、気分転換も含め、電車で行く事にしたのである。
明朝タクシーを呼び、駅に向かうコルクさん、普段何気なく歩ける距離だが今は無理(T_T)。
1000円程で到着した最寄り駅…、アナウンスがやたらとうるさく響いて聞こえる。
電車に乗り窓の外を眺めると、電車の揺れも並行してか、ちょっとした違和感、気持ち悪さを感じるが、それは長くは続かず眠気が勝った。
寝過ごさないようにアラームをセットする…。
何らかの夢を見ていたようだ…。
アラームが鳴る!
電車の中…!
ということで、慌てて止めるコルクさん!
眠りが深かったのか、約40分の道のりが…、もう着いたのだ…。
驚くべき速さだ!
アインシュタインが「時間の速度は一定ではない」というような表現をしていたが、どうやら本当らしい…。
駅のアナウンスで耳が痛いコルクさんは、ハンドタオルで汗をぬぐい、逃げるように駅を後にするのであった。
無事、実家に到着。
長めのお経と、ちょっとした法話を聞いたコルクさん、三回忌も終わりソファに座る。
テーブルの上に、おにぎりや、サンドウィッチなど、ちょっとしたものが並んでいる…。
ちょっと寝ようかと、心地良くなりかけて来た時であった。
眠りに就くはずのコルクさんに「何か食べろ」との命令が下されたのであった…。
全く食べる気にならないコルクさん…。
食欲もないのに何か食べろとせがまれる…。
寝たふりをするコルクさん。
栄養が必要だ、とかなんとか…聞こえてくる。
昔から、食欲がなくても何か食べた方がいい、とはよく聞いたものだが…本当だろうか…。
これ以上の抵抗は、要らぬ争いを生む…、と判断したコルクさん。
渋々ながらも、そこにあったサンドウィッチを2つ程食べてみる…。
やはり、それ以上食べる気にはなれない…。
と、再度、寝っ転ろがるコルクさんの目の前に、鎌と軍手が差し出された…。
「んん…?なに?」
次の瞬間、目と耳を疑った!
草むしりを手伝えというのだ!
何なんだこの展開わあっ!?。
鬼である…(汗)。
実家までやって来て、お経を聞いただけだが、コルクさんの体力は、かなり消耗しているのだ…。
病人なのだ…、クラクラするのだ。
その昔、織田信長は、まず身内を閉廷したことにより、戦(いくさ)の天才になったと聞いたことがある。
それほど身内とは、手強いものなのだ…。
以前から思っていたことだが…、実家に来ると、何故か、その時したくない事ばかり強いられる…。
まるで分っているかのように…。
驚きと、あっけにとられるコルクさんであった…が、少しでも体を動かした方が良いのでは…、と一瞬頭をよぎった…。
これが…、すべての間違いだった!
草むしりを始めるや否や、何とも言えない違和感、目の焦点が合ってない感じ、大量に流れ落ちる汗…。
指先まで震えてきている…
それでも「雑草ごときに負けてなるものかっ!」と奮闘する事20分!
「負けた…(T_T)」
精根尽き果て、ふらふらと家に入る…。
雑草にすら、むしり勝てなかったコルクさん…。
こんな事では…、いずれはコルクさんが、雑草に、むしられてしまうのではないか…。
訳の分からない事をつぶやきながら、倒れ込むコルクさん…。
そんなコルクさんを、なだめるように受け止める、優しさあふれるソファがここにはあった…。
おやすみ…(+o+)
2時間程ウトウトしていただろうか…、そこそこ回復している。
またまた懲りずにウロウロしだすコルクさん。
ガレージにあった自転車に目が留まる…、「乗ってみようか…」と頭をよぎった瞬間!
サドルにまたがり、走り出していた…。
またやってしまったかコルクさん…、と思いきや、意外にスムーズに気持ちよく走るコルクさん!
これには自分でも驚いた!
車に乗れず、歩くことも大変な時に、全く違和感なく自転車には乗れるのだ!
楽しくなってきたコルクさんは「うひょうぉぉ~(^O^)/」町中を駆け巡る!
見方によれば、どうかしてしまったオッサンに見えるだろう。
30分以上走り回っただろうか、家に戻った時に搔いていた汗は、近年まれにみぬ清々しさであった。
20分程ソファにもたれかかっていただろうか…。
調子に乗ったコルクさんは、散歩をしようと外へ出た(コルクさんは調子に乗ると、とことん乗り切るのである)。
実家のすぐ近くにある海へ向かうコルクさん、歩き出しは少々の違和感はあったものの、長くは続かず身体が慣れてきた。
波は穏やかだった。
優雅に浜辺を歩くコルクさん、8月もそろそろ終わりに差し掛かる。
さすがに海水浴をしている人はいないが、浜辺には犬の散歩をしている人など、ちらほら人気はあった。
15分程歩いただろうか、多少の疲れはあるものの、倒れる程までではない…。
どうやら15分程度は歩けるようになったらしい。
頭からの汗は止まらないが…。
相変わらず食欲のないコルクさんは、気持ち程度におにぎりを1つ食べ、水をがぶ飲み!スマホで電車時間を確認する。
少し歩ける!自転車に乗れる!
2つの大収穫を得たコルクさんは、夕日が沈む頃には住家へ帰る為、約40分の電車に揺られるのであった…。
アナウンスが響くぅぅ(T_T)/~~~
翌日、まず手に入れるものは自転車!と意気込み住家を出るコルクさん。
確かに少々歩いても大丈夫そうである。
ふと立ち止まるコルクさん…。
そもそも…自転車屋はどこに…?…。
そう思えば町の自転車屋というものは、最近ではめっきり見なくなったものである(コルクさんが幼いころは、やっているのかどうか怪しげな自転車屋が沢山あったものだが)…。
スマホで検索するも見当たらず、その辺を歩いている人に聞くことにしたコルクさんの、すぐ近くを車に乗ろうとしていた年配の女性を呼び止める。
「すみません、この辺りに自転車屋はありませんか?」と尋ねるコルクさん。
「え~自転車屋ねえ…昔はいっぱいあったんだけどぉ…」と苦戦中の年配女性…、「あっ!ここ曲がって、こう行って…、」と説明してくれる。
「そこが以前、自転車屋だったよ!」
「以前??」と聞き直すコルクさん、「まだやってるかもしれないし…閉めちゃったかも…」
丁寧にお礼を言ったコルクさんは早速行ってみた…。
が、跡形もなかった(T_T)/~~~。
次に捕まえたのはシルバーカーを押して歩くお婆さん。
「自転車なら、あそこへ行けばいいですよ」と上品な口調で教えてくれるたのは、大型のショッピグセンターだった…。
そこはコルクさんも知っているのだが…行くには車が必要なのだ…。
もう隣町まで来ていたコルクさん、歩くのはそろそろ限界か…。
ハンドタオルで汗を拭うコルクさんの前を、自転車を押したおばさんが通りかかる。
この人なら何か知っているに違いない!
慌てて呼び止めるコルクさんに、そのおばさんが、よく空気を入れてもらうという自転車屋を教えてもらえた。
そう遠くはなかった。
自転車屋のドアを恐る恐る開けるコルクさん…「すみませーん」と呼んでみる…。
店内は狭く、自転車が6台程申し訳程度に展示してある…。
「はーい」と元気のいい返事とともに、ややがっちりした体格の、コルクさん位の年の男性が現れた。
【次回予告】
何とか、自転車を手に入れ、わずかながらも、生活の範囲が広がったかに思えたコルクさん…。
であったが、体調の回復はみられず、今度は…耳が異常に響く!という事態が起こりだす…。
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